先日、「勝ち続ける意志力」というプロのゲーマーの自伝を読みました。
僕自身は全くゲームをしない人間なので、「ゲームでプロってどういうことよ」という感じで読み始めましたが、予想に反して印象に残る部分が多く、また僕自身の「切り絵を続ける意志力」に通じる点があったので、今回ご紹介するに至りました。
なお、当方ゲーム事情には疎いので、一部誤った (or 古い) 記載がある可能性があります。その際は優しく指摘してあげてください…。
ゲームで勝ち続けること、勝負で”常勝”を実現すること
作者のウメハラさんは、ゲーム界では名を知らない人がいないほどの超有名人で (僕も名前だけは聞いたことがありました)、格闘ゲームの世界大会で連覇を達成、その賞金で生活する「プロゲーマー」という職業に就いています。
「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」としてギネス登録されており、本を読む限りある程度運の要素が絡むゲームでも勝ち続ける、鬼のような人だと推察されます。
対人戦ゲームにおけるウメハラさんの戦い方は、「どれだけ殴られても、諦めずに起き上がって戦う」。地べたを這いつくばい、その中で独自の勝てる戦法を見出します。
ゲームというと攻略法、裏ワザ、必勝法などがあり、その方法を使えばどんな人でもある程度は勝てるという “ワザ” が存在するものですが、ウメハラさんはそういったワザの類は一切使いません。
なぜなら、一過性のものは、異常な速さと規模で流布され、結果的に捨てられるから。
ウメハラさん自身が苦労して編み出したワザでも、通用しなくなった瞬間、切り捨て、勝つ方法を新たに模索します。
このあたりのエピソードから、”常勝” に必要なのは「一般的に勝てる方法を身につける」ことではなく「勝つための新しい方法を模索し続ける」ことだとわかります。
この話は、企業などが過去の成功体験に縛られ、「昔の方法は絶対に通用する」と思い込んだ結果、衰退していくなどのビジネスにも結びつく考え方と言えます。
ゲームを続けることへの迷い
常勝のウメハラさんでも、ゲームを続けることに迷い、別の道を模索した時期もあるそうです。
ゲームで世界一になっても、野球やサッカーのように認められないことに耐えかねた23歳の頃で、ゲームの代わりの何かを見つけようと麻雀や介護の仕事などを経ます。
ちなみに、ゲームでトップクラスになった思考を駆使し、3年で麻雀においてもトップレベルまで到達します。一つの道での成功体験は、別の道への成功への道筋を示してくれることを示唆するエピソードです。
しかし麻雀でもゲームと同様、勝ち続けた結果に絶望し「どうして学校の勉強をちゃんとしてこなったんだろう」と後悔し、「何も打ち込むものがない人生になるんじゃないだろうか…」と不安に陥ったそうです。初めての挫折だったと書かれています。
その後、介護の仕事を始め、仕事にやりがいを感じながらも、友人からの強引な誘いをきっかけにゲームの世界へと戻ります。
そこで自分には誰にも負けない特技があることを思い出し、
俺が子どもの頃から続けてきた努力はやっぱり並外れていたんだ。こんなに勝てる、成果を発揮できるものがあるって、すごくありがたいことなんだ。
と考えたそうです。
確かに、ゲームを続けていても誰かのためになるわけではないですし、僕も切り絵に打ち込んでいますが、切り絵を続けていても、世界には影響を及ぼせません。
それでも「自分には力を発揮できるものがある」という事実が、自分が切り続ける原動力だと気づかされました。
好きなことがある幸せ
自分の気持ちをひとつの対象に100%向けられるのは幸運だと言える。才能があるとか、努力家であるとか以前の問題で、「俺はこれが何よりも好きだ!」と言い切れるとするならば、それはすごく恵まれていることだと思う。
これも自分が「切り続ける意志力」の中で漠然と考えていたことでした。
僕は切り絵や英国建築が好きで、それは紛れもない事実です。なので、好きなことをやれている今の状況は恵まれているんだなぁと再認識させられました。
目的は成長し続けること
賞金目当てで頑張ってきた人間の気持ちは驚くほど弱い。(中略) 大会というのは、日々の練習を楽しんでいる人間、自分の成長を追求している人間が、遊びというか、お披露目の感覚で出るものではないだろうか。大会における勝利は、目標のひとつとしてはいいかもしれないが、目的であってはいけない。
「切り続ける意志力」に通じる点で、自分にとって展示会の入賞は、あくまで結果の一つで、好きなものを好きなように作った結果であってほしいと思っています (もちろん受賞したら嬉しいですが…)。
ウメハラさんは日々ゲームをする中で「目的は成長だから、大会の結果にはこだわっていない」と言っており、僕も日々、切り絵をする中で「今日はいつもよりもスピーディーに作業できた」「線をきれいに切れるようになった」「さらに細いカーブを切れるようになった」という自己の成長を楽しむためにやっているんだなと気づかされました。
総括
長くなりましたが「勝ち続ける意志力」を読んで、飽きっぽい僕が切り絵を長年続けている理由が明確になりました。
自分の中でなんとなく存在していたものが、しっかりと明文化されると、自分の気持ちに気づかされます。
「プロ・ゲーマー、ウメハラ」という未知の存在の中に、新しい発見があるかもしれません。ゲーム好きの方以外にもオススメできます。
では、そんな感じで!
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