【デザフェス】無名アーティストが、700人集まるブースを作るまで




  デザインフェスタVol. 48お疲れ様でした! おかげさまで、とても楽しく終えることができました。

さて、上のようなタイトルをつけてしまうと、「集客数が正義なのか」という話になりそうなので、ここで免責事項を述べておきます。

僕はブース集客数や売り上げが伸びることが、必ずしも良いとは考えていません。それよりも自分自身が楽しんだり、人が楽しめるものを作ろうとすることが大事だと思います。

ただ2018年のアーティスト活動の中で「プロとアマチュアの違いは何か」を考えていて、

  • プロフェッショナルとは、お客さんのために活動すること
  • アマチュアとは、自分のために活動すること

という方針を打ち立てました。

[関連記事]>>>【プロのアーティストになりたい】プロとは何か? を考える

2018年のデザフェスは、僕にとって「人が楽しめるものを作れるか」を測るためのものさしで、とても大切なイベントでした。

「人が見て、楽しいものを作りたい」

この目標を達成するため、いろいろと施策してきました。ブース来場者数700人というのは、その結果の一つだと思っています。

今回の黒沼弥生は、何を考え、どんなブースを作ろうとしたか。その考えをまとめておきたいと思います。

注意
ブース来場者はブースで立ち止まり、作品を一通り見てくれた方を1名とカウントしています

どうすれば人が集まるものを作れるか?

優先順位をハッキリさせる

僕が意識したのは一つだけです。上にも書いたように、「人が見て、楽しいと思うものを作る」です。

もちろん自分が作って楽しいもの=人が見て楽しいものになれば、作り手と見る側、両者が幸せになれる最高の方法でしょう。

ただ優先順位をつけるなら、

  1. 人が見て楽しいものを作る
  2. 自分が楽しいものを作る

であることをハッキリさせました。

優先順位は大切です。というのは、創作活動の中で曖昧なものを、ハッキリ決めないといけないタイミングが出てくるからです。

世界は「善いか、悪いか。白か黒か」で物事をはっきりさせようとしますが、中にははっきりしないことの方が多いです。

そんなとき自分自身で決断を迷わないよう、「迷ったらどっちをとるか」を明確にしておきました

デザインフェスタとは何か? を考える

デザフェスって楽しいですよね。

見るのも出展するのも楽しい、お祭りのようなイベントです。

では、デザフェスに来る方々に楽しんでもらうためには、デザフェスに来る方々が「何を求めているか?」を考えなければなりません

これが最初のステップです。

7月に書いた記事に、僕が「デザフェスとは何か?」を考えた跡があります。ここから抜き出すと、

そもそもデザフェスとは何でしょうか?

デザフェスはよくお祭りに例えられますが、お祭りに行く理由は「そこに行ったら楽しそうなもの (屋台) があるから行く」という人が多いと思います。

しかし実際に客層を分析すると、ほとんどのお客さんは「もともと立ち寄りたいブースがある人」だと気づきます。

これは「お祭りがあるから行く」のではなく、「わたあめ屋さんがあるから行く。ついでに他の屋台も見ていく」というように、目的がはっきりしているお客さんが多数ということです

目的がはっきりしているお客さんが向かうブース、これが長蛇の列ができる人気ブースです。

残念ながら僕のようなほぼ無名のアーティストだと、このような列のできるブースを作るのは困難です。よって別の戦略が必要となります。

[引用] Yayoi Kuronuma | 【仮説】デザフェスで人気ブースを作るために1番必要なこと

僕が考えたことは、「見たいものがあって、それを見にくるお客さん」がいて、「目的のブースを見終わって、『何か面白そうなものはないかな?』と探すお客さんに、いかに『うちのブースに寄ってみませんか?』をアピールするか」が重要ということです。

うちのブースに寄ってみませんか? をアピールする方法

booth

一言で表すと、【世界観】だと思います。パッと見の印象です。

下の「人気のあるブースと、そうでないブースの違い」というメモが「なるほどな」と思いました。

「人気があるブースと、そうでもないブースの違いはなんだろう?」
と考えながら会場を歩きました。

いくつかメモ的に気が付いたことを書いておこうと思います^^。

1、作品に「専門性」がある「魅力的である」のが大前提
・インパクトがあり、かつ、完成度が高いオリジナルキャラクター
・素材に特徴があり、季節感があり、世界観がある
・デザインにとても個性があり、それでいてみんなが好きなツボを押さえている

[引用] デザフェスで人気のあるブースと人気のないブースの違いって・・・

デザフェスって、ただでさえブース数がたくさんあります。もちろん、そこが売りの一つなのですが…。

ブースに興味を持ってもらえるか、判断される時間って一瞬です。0.5秒ぐらいでしょうか。

その0.5秒の中で、「お? このブースちょっと寄ってみようかな?」と思われるには、パッと見の印象、ブースの世界観を研ぎ澄ますしかないと思います。

世界観を作る

take_photo

僕は【シンプルに視て、シャープにする】がコンセプトの切り絵アーティストです。

建築の切り絵が好きな理由は、

  1. ヨーロッパのゴシック建築に思い入れがある
  2. 切り絵で建築を作る人が少ない
  3. 直線を切るのが好き・楽しい

という3つです。

2018年は、建築切り絵に合わせた世界観を作ることに注力しました。

具体的に、世界観を演出するために注力した分野は5つ(+α) あります。

  • フォント
  • ロゴ
  • ファッション
  • フレーム
  • 売り場作り
  • (おまけ)

一つ一つ解説していきたいと思います。

フォント

フォントはとても大切です。フォント一つで作風が左右されるといっても過言ではありません。

ただ、フォント選びに決められたルールはありません。

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こちらの本に書いてあったのは、「なんとなく、それっぽいで選んでOK」ということでした。

font

僕の場合、ゴシック建築が作られた13〜15世紀、18〜19世紀のヨーロッパの資料をみたり、イギリスの看板を参考にフォントを決めました。

logo

候補となったフォントは全て紙に印刷し、その中から好みのものを選んでいます。

最終的に、僕の作品で使用するフォントは4つに絞っています。

凸版文久明朝

font

メインで使っているフォントです。

凸版印刷らしい尖った角が、切り絵の切り口のようで親近感があるという採用理由です。

キャプションから作品解説まで、基本はこの「凸版文久明朝」を使っています。

Snell Roundhand

font

海外ブランドでも使われている、高級感のある筆記体フォントです。筆記体を使いたいときはこちらがメインになります。

筆記体ですが、文字がみやすい形で気に入っています。凸版文久明朝と合わせても、違和感がない点、高級感のある雰囲気が好きです。

Courier

font

タイプライター風のフォントで、丸い角が特徴的なゴシックフォントです。

あまり使用頻度は高くありませんが、18〜19世紀、まだタイプライターを使っていた時代背景にマッチしたフォントです。

Broken plenewing

font

「ザ★ゴシック」というイメージのフォントです。妖精帝國のCDジャケットや、D-Graymanなど、中世ヨーロッパをイメージした作品に使われる印象があります。

ゴシック調フォントはいくつかありますが、Yの形がかっこいいので採用しました。

さらに詳しい情報は、過去記事をご参照ください。

[関連記事]>>> Yayoi Kuronuma | 【フォントの選び方】アートの世界観をフォントでどう設計するか?

ロゴ

logo

黒沼弥生のイメージロゴは【双頭のワタリガラス】です。ワタリガラスをモチーフに採用した理由は4つあります。

  1. シンプルでわかりやすい
  2. ヨーロッパと日本に馴染みやすい動物
  3. 色が世界観とマッチする
  4. 双頭に思いが込められている

1. シンプルでわかりやすい

ロゴに求められる要素は3つあって、「わかりやすい」「個性的」「シンプル」です。

「わかりやすい」は、形だけで判断できること。拡大・縮小してもシルエットで判断できることが大切です (これを『ロゴの耐久性』と呼んでいます)。

「個性的」は、わかりやすさに一味加え、他と違う! を演出すること。頭を二つにした理由でもあります。

「シンプル」は記憶への残りやすさ。複雑さを取り除き、大事な要素を際立たせます。

僕のアート活動のコンセプト【シンプルに視て、シャープにする】に通じるものです。

この3つを極めたロゴが、Apple社のリンゴーマークだと思っています。

2. ヨーロッパと日本に馴染みやすい動物

イギリスには、「ワタリガラス (Raven) が滅びると、ロンドン塔が滅びる」という伝承があります (「ロンドン塔」Wikipedia参照)。

また日本では、3本足のカラスの妖怪の八咫烏 (ヤタガラス) や、烏天狗 (カラステング) など神話でモチーフとなることが多く、親和性が高い動物といえます。

カラスというシンボルは、実は日本やヨーロッパと密接に関わる動物なので、テーマとして選びました。

3. 色が世界観とマッチする

カラスの黒と、切り絵の黒がマッチするからです。白と黒を反転しても、世界観が崩れることがありません。

logo work

4. カラスを双頭にした理由

booth

個性を演出し差別したかったことに加え、「1つの体に、2つの能力」を表しています。

過去記事から双頭にした理由を引用します。

変化の激しい時代を生き抜くには、2つの方法があると考えています。

一つは専門性を徹底的に高め、完全なプロフェッショナルとして生きること。職人、研究者、プロスポーツ選手などがこれに当たります。

もう一つは、2つの能力を掛け合わせ、ゼネラリストとして生きること。スペシャリストになりきれなくても、2つの能力に相乗効果を持たせ、スペシャリストにカバーできない点を補える存在になりたい。

自分の価値観や哲学を深掘りし、意思の表明として「広い視野を持てる人へ」という意味を持たせました。

[引用] Yayoi Kuronuma | 黒沼弥生のロゴ「双頭のワタリガラス」に込められた3つの意味とは?

さらに詳しくロゴについて知りたい方のために、過去記事へのリンクを記載しておきます。

[関連記事]>>>【ロゴの作り方】黒沼弥生のロゴに隠された4つの秘密

[関連記事]>>>黒沼弥生のロゴ「双頭のワタリガラス」に込められた3つの意味とは?

ファッション

2018年、一番考え方が変わった部分は、この”ファッション”かもしれません。

fashion

というのも、僕はこれまでファッション⇔人柄⇔作品という3つの関係に無関心でした。

しかし周りとの意見交換で、「どんなに優れた作品でも、それを作る人が尊敬できない人物なら、作品がダメに見えてしまう。ファッションは、『その人がどんな人か?』を考える入り口だ」という言葉に納得しました。

これは心理学用語でいう「ハロー効果」というやつで、アーティストの印象に作品の印象に引っ張られてしまうことです。「作品を価値あるものにするには、お前自身が価値ある人間になれ」と言われているように感じました。

内面は、人としてもちろん鍛えなければならない点です。でも見た目的にわかりやすく、一番変えやすいのはファッッションだと思いました。

そこで、作風にマッチし、その人の個性になるファッションを探索しました。

fashion

こちらが現在採用しているファッションです。

まだまだ勉強不足なので、これからさらに学んでいきたい分野です。2019年の一つのテーマが “個性” になりそうですね。

なお、人の内面を鍛える上で参考にしている本を2冊ご紹介しておきます。

本来、ファッションよりも内面に磨きをかけなければいけないんですが…こちらも勉強中です。

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フレーム

booth

今回から作品の額装を一新し、新フレームで統一しました。

「『自分は、これが一番クールだと思う』と自信をもって言える」がフレーム作りのキーワードです。

exhibition_mono

これまで僕は、白いボックスフレームに作品を入れていました。理由は「みんながコレを使ってて、違和感がないから」です。

でも、人と同じ額装という安心感、気軽さ、使いやすさ…それを理由に額を選んでいいのだろうか? と考えを改めました。

アートとという表現の世界で、自信をもって「コレだ!」と言えるものを作ろう。そう思って、額装を根本から見直しました。

frame

作品の色や形から、合うと思われるフレームの色、サイズ、幅、比率など、100を超えるシミュレートをパソコン上で行い、自分が「コレだ!」と思えるものを選んでいます。

frame

現時点で『自分は、これが一番クールだと思う』と思えるものを作りました。

さらに、この額装では前面のアクリル板がUVカット (紫外線カット) 仕様になっています

長期間、部屋に飾っても黒の退色や白の日焼けを極力まで抑えることで、長く楽しんでもらえる作品にしたかったからです。

なお、これまでにご売却いただいた作品は、一旦僕の方で回収させてもらい、全額僕の負担で額装を新バージョンに更新しました

ご購入いただいた方にご協力いただいたアンケートでは、購入満足度、100%を達成。実施してよかったと思います。

売り場

ポストカードなどのグッズ売り場も、ブースの1パーツとして気を抜くことはできません。

booth

特にアイテムを置くための小道具にはこだわり、18世紀の世界観に統一するため、アンティークのトランクを使いました

こちらのトランクは、普段のファッションに合わせて実際に使っているものです。

ブース作りの裏側については、別記事で詳しく解説しています。

[関連記事]>>>【デザフェス】売り場の作り方とスピーディーな裏方業務ノウハウ

(おまけ話) “Truth” 立ち上げ

truth

全ての作品は、黒沼弥生が自らの手で作ったことを証明します

まだまだ無名アーティストなので、これまで不正転売や複製販売の被害にあったことはありません。

ただ他の切り絵作家様を見ていると、これから作品の複製品が出回る可能性はゼロではありません。

そこで「これは黒沼弥生が作ったことを、100%証明します」をうたう “Truth (真実)” というブランドを立ち上げました。

Truthは、僕が制作・販売している作品なのですが、識別するためのポイントが2つあります。

1. 承認印

stamp

世界に一つしかない特注スタンプを押印し、作品が固有であることを証明しています。

世界に一つしかないコカ・コーラのレシピ同様、Yayoi Kuronumaの承認印は、厳重に保管されています

2. ロットナンバー

lot_number

全ての作品には、購入されたときに20桁以下の番号が与えられます。

これは【2進数、10進数、16進数】の組み合わせでつくられた固有の番号で、ロットナンバーを照合すれば

  • 誰が
  • どこで
  • 何を
  • いくらで

購入したかわかるようになっています。

これにより、作品の複製販売・不正転売などの被害を防ごうと考えました。

僕の作品を、良いと思って購入してくれた人を裏切らないためです。

長期的な目線で、作品を購入してくださった方のプラスになるように考えていきたいです。

世界観の作り方【まとめ】

「ちょっと立ち止まって寄って行こうか?」と思われるために、ブースの世界観を研ぎ澄まそうと考えました。

そのために

  • ブース全体の見た目
  • ベースカラー
  • 作品の統一感 (フレーム)
  • ロゴ
  • フォント
  • 小道具
  • ブースに立つ人のファッション

など、全てに統一感をもたせました。

コンセプトの作り方

上に書いたような世界観を作る上で、「どんなものを作ろうか?」の軸となる考え方を、コンセプトと呼んでいます

コンセプトの辞書的な意味は、

1 概念。観念。
2 創造された作品や商品の全体につらぬかれた、骨格となる発想や観点。

[引用] コトバンク | コンセプトとは

であって、アート活動やモノづくりにおけるコンセプトは主に2の意味です。これをさらに分解すると、

  1. 何をしたいか? (ビジョンの集合体)
  2. 何を用いるのか? (アイテムの集合体)
  3. 20文字以内の母国語の文字 (伝わりやすさ)

となります (玉樹真一郎 (2012),『コンセプトのつくりかた』, ダイヤモンド社より)

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詳しくは「【デザフェス】黒沼弥生のブース作り | コンセプトと目的」の記事にまとめていますが、僕のブース作りにおけるコンセプトは、【「珍しいものを見れた!」という体験の提供】です。

[どうすれば人が集まるものを作れるか?] の項目でも述べていますが、デザフェスにくるお客さんは何を求めているか? を考えました

デザフェスに遊びに来る人は、「面白いものが見れるかも!? という期待」が大きな割合を占めているというのが僕の考えです。

それに対して、僕が提供できるものは何か? をひたすら考え…

→ 切り絵って珍しいよね

→ でも、建築物の切り絵はもっと珍しいよ

→ じゃあ「珍しいものを見れた!」という体験を持って帰ってもらおう!

こうして僕のデザフェスにおけるコンセプト【「珍しいものを見れた!」という体験の提供】が決まりました。

なお、今回のデザフェスの目的は【600人が来場するブースを作る】としました。

なぜコンセプトや目的が必要なのか?

コンセプトが必要な理由は、「迷ったときの判断基準になるから」です。

アート含め、ものづくりの現場では「A案とB案、どちらを採用するか?」を決断する場面がきます。

そのときは一旦コンセプトに立ち返ることで、「大切にしなければならないことは何だったか?」を思い出し、選択肢の中から決断することができます。

迷ったときは【「珍しいものを見れた!」という体験の提供】に立ち返り、何を作りたかったかを明確にしました。これがコンセプトが必要な理由です。

目的が必要な理由は2つあります。「到達したいゴールを明らかにし、モチベーションを維持する」「達成 or 不達成の結果を反省し、次に活かす」です。

そのため目的を立てるには、次の3つを満たさなければなりません。

  1. ギリギリ実現できそう
  2. シンプルで、わかりやすい
  3. 魅力的かどうか

(盛岡毅 (2016)『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』より)

今回は【600人が来場するブースを作る】を目的にしました。

デザフェス来場者は約60,000人なので、言い換えると【デザフェス来場者のうち、100人に1人が訪れるブースを作る】になります。

数字を使った目的は、達成 or 不達成が明らかで、言い訳ができない指標となります

今回は初めての試みだったので、600人という数字に根拠をもっていませんでしたが、700人という来場者数を参考に、次回「もっと面白いと思ってもらえるものを作るには?」を考えていきたいと思います。

[関連記事]>>>【デザフェス】黒沼弥生のブース作り | コンセプトと目的

物事を考えるときのフレームワーク

コンセプトや目的を立てるとき、僕がよく使っているフレームワークをご紹介します。

アートでもデザインでも仕事でも、基本的にこのフレームワークを用いて考え方をシンプルにすると、やるべきことがスッキリ整理されます。

objective
  1. Why (なぜ? 目的)
  2. Who (誰に? 目標)
  3. What (何を? 戦略)
  4. How (どのように? 戦術)

一貫した物事を考えたいときは、必ず目的 > ②目標 > ③戦略 > ④戦術の順に考えていきます

今回は詳しくお話しませんが、各項目について簡単にご紹介いたします。

① Why (なぜ? 目的)

全体をまとめる最上位の概念、考え方と理由です。

今回のデザフェスでは【ブース来場者数600人】が目的です。600人という数字の根拠は、【デザフェス来場者のうち、100人に1人が訪れるブースを作る】です。

② Who (誰に? 目標)

目的を達成するため、「どんな人が興味を持つブースを作るか」というターゲットを設定します。

  • 切り絵が好きな人
  • ヨーロッパの建築が好きな人
  • 買うより、「面白いものを見たい」人

がメインのターゲットとなります。

全員に刺さるアートはありません。いや、全員に刺さるアートを考えることは、誰にも刺さらないアートを作ることと同義です

「好み・年齢層・国籍・文化・考え方など、多様性の中から、こういう人に刺さるメッセージを作れれば良い!」を明らかにします。

「私は成功のカギというものはわからないが、失敗のカギは知っている。それは全ての人を喜ばせようとすることだ。」

ビル・コスビー (コメディアン)

③ What (何を? 戦略)

「誰に?」を設定したあとは、「何を売るか (魅せるか)」という戦略を考えます。

デザフェスに来るターゲット層が、足を止めても見たいもの…それは他ではあまり見ることができない、面白いもの・驚きがあるものです

london

僕が作っている切り絵に、面白さ・驚きという感情をプラスすることで、モノの完成度を高めます。

④ How (どのように? 戦術)

最後に考えるのが戦術です。「How (どのように)」とは、「What」を「Who」に届けるための方法です

signboard

デザフェスでは、Howは【パッと見の世界観】で設計しています。

ベースカラー、フォント、フレームなど世界観に統一性を持たせました。

 

以上、ほとんどの仕事・デザイン・アートで使えるフレームワークのご紹介でした。

なぜ黒沼弥生はブースでアンケートを実施したか?

questionnaire

今回、新たな試みとして「Twitter・Instagramのフォロワーです or ブログ読者です」とお声がけいただいた方にアンケートをご記入いただき、特製しおりをプレゼントするという企画を行いました

この企画、実は僕の中では大きな意図がありました。

それはアーティストと作品を見る人 (サポーター) の、コミュニケーションを可視化することです。

アートって何だろう?

アートは時代によって意味合いが変化します。

例えば、昔のアートは権力者の力 (財力) の象徴という意味合いが強いです。

でも今は一般市民にも解放され、エンターテイメント (娯楽) としての役割が強くなっていると感じています。

しかしアート作品がアーティストの表現の場という意味は、今も昔も大きくは変わっていません。作品の中には、アーティストが表現したいこと、見る人に伝えたいメッセージが隠されています

でも多くの場合、アーティストと見る側の意思疎通、伝えたいメッセージと伝わっているメッセージを測る手段はありません

そこで僕は、アンケートで作り手と見る側のコミュニケーションを可視化 (言語化) しようと考えました。

アーティストと見る人のコミュニケーション

communication

僕が「クール」を目指して作ったものを、見る人が「キュート」と感じたら、作品を介してのコミュニケーションが不一致と言えます。

一方、僕が「クール」を目指して作った作品を、見る人も「クール」と感じてくれたら、作り手とサポーター様の間で、コミュニケーションが一致したということです。

自分の中にある「作品を通じて、コレを伝えたい!」というメッセージがどれぐらい浸透しているか? それを知りたいと思いました。

もちろん見る人には個人の楽しみ方があるので、100%伝わる必要はありません。

ただ、自分が作った作品に対して「どのような印象を受けるか。特にどのような言葉で表現されるか」は知りたいと思いました (一致する表現を、『共通言語』と読んでいます)。

同時にファッション含め、アーティスト自身の印象と作品の印象が、どれぐらいかけ離れているかも確認させていただきました

次回以降、【世界観】を作るときに参考にさせて頂きます。

アンケートにご協力いただきましたみなさま、ありがとうございました!

今回の反省

さて、これまで半年間「人が見て、楽しいと思うものを作る」を目標に活動してきました。

うまくいく部分もあれば、「失敗したな」と思うこともたくさんあります。でも、やってよかったと思うことがほとんどです。

最後に、次回以降に向けて反省点をあげたいと思います。

ブースの導線の失敗

booth

今回の一番の反省点です。

Mサイズ (1.8m×1.8m) を借りたのですが、作品と机の配置がうまくできず、せっかくの切り絵に近づいて見れないという致命的な欠点がありました。

booth

隣のブースと間を空けて、作品に近づけるよう構成したつもりでした。しかしブースの隙間に入るには精神的な壁があり、なかなかブース内まで入ってくれないことに気づきました

これは完全に導線の設計ミスなので、次回以降は改善していきたいと思います。

booth

壁いっぱいに作品を配置できたのはよかったと思います。

人の視点とブースの構成

展示ブースを作る上で、「壁さえ作れば、どんなブースか理解してもらえるだろう」と思っていました。しかし実際には

  • 右側の壁から入る視点 (右、高め)
  • 右側の机位置から入る視点 (右、低め)
  • 左側の壁から入る視点 (左、高め)
  • 左側の机位置から入る視点 (右、低め)

の4方向から視点が入ることを学びました。

4方向、どこの方角からブースをみても、「このブースは何を展示しているか?」を瞬時に理解してもらえるデザインの必要性を実感しました。

こちらも次回の課題です。

「切り絵なんて知らない・興味ない」を前提にした構成

切り絵はデザフェスの中で比較的珍しいジャンルです。ただマイナーなので、一般的な認知度は高くありません

もともと切り絵が好き、切り絵に興味あるという人に楽しんでもらえた点は良かったのですが、それ以外の「切り絵なんて知らない・興味ない」という99%の人へのアプローチ方法 (考えのフレームワークのHowに当たる) は課題だと思いました。

特に初見で「切り絵・写真・普通の絵の区別がつかない人」に、わかりやすく、興味をひくアプローチ方法を考えることは次回以降も頭に入れておかなければなりません。

まだまだ考えなければいけないことはたくさんあるようです!

「わかりやすい」デザインを学ぶ

上のブースの導線とも重なる部分ですが、「いったいこれは何なのか?」がわかりにくいブースだったようです。

「コレはこう作れば、人に興味を持ってもらえるかも?」とイメージしていたものが、自分のイメージ通り伝わらない、もどかしさを実感しました

「わかりやすい・伝わりやすい」は、デザインにおける最重要課題だと実感。もっと勉強する必要があるようです。

ただし「わかりやすい」という浅い部分のデザインしかないと、コアなファンがつかないという欠点もあります

「よく知ったら、深くて面白い!」という深い部分のデザインも必要です。

  • わかりやすい = 浅い部分のデザイン
  • 深く知ったら、もっと面白い = 深いデザイン

この2つをバランスよく配置し、もっと楽しんでもらえるものを作っていきたいです。

 

以上、デザフェスVol. 48の振り返りとなります。

自分のための備忘録のつもりが、気づけば1万字を超える記事となってしまいました。

これからさらに、人が見て「面白い!」と思ってもらえるものを作れるよう、頑張っていきたいと思います。

今後とも、黒沼弥生をよろしくお願い致します。

私信

3月に試験があるため、それに向けて試験勉強中です。

これから少しTwitterやブログの更新頻度が落ちるかもしれません。

よろしくお願い致します。



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